始めに

2010年三月十日、その日が俺が何の計画もなしに旅に出た日だ。

バッ クパックの中には要らないものばかり、だけど心の中には夢と希望。世間の常識なんて何もない、ただの馬鹿。次の目的地のガイド本や地図も持たず、どこに着 くかことさえよくわからずに、好奇心と不安の中、もう二年以上も住んでいたメルボルンにある家から出発した。友達と手を交わし、共に背をたたき、さよなら と、無事と健康を祈られた。人生の中で最も感情的で興奮を感じた瞬間だった。

それから十ヶ月が過ぎアジアを回ってきた。今、日本の実家に帰り家族とともに休んでいる。そして次の目的地インドに向けて、心の準備の最中だ。

いくつかの後悔、友達との別れ、楽しかった仕事、住んでいた家、惜しい愛、そして人生という現実。しかしながら、この先自分でも予測できないような遥か遠くへ、世界を彩るカラーを見に旅をし続ける覚悟だ。